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 「リハビリで『治す』って、どういうことか、わかるか?」、ある病院のリハビリテーション部門を創設し、取りまとめ、クリニックや運動施設またデイサービスなどへも拡張していった、先輩の理学療法士の言葉です。その先輩は、地域密着型の病院に勤務されていたので、地域の皆様の生活に密着し、日々、リハビリテーションを実践されていたのだと思います。

 リハビリという言葉の意味や真相の続編で、考えてみたいと思います。

 リハビリテーションは、古くは「全人間的復権」といわれてきました。少しひねると、リハビリテーションの一部である理学療法をやるのであれば、リハビリテーションにつながる理学療法をやらなければいけないはず。また、作業療法もしかり。リハビリテーションの中の専門分野であれば、最終はリハビリテーションにつながらないと、それぞれの分野のやるべきことの意味を成さないと思います。

先輩理学療法士の言葉に戻りますが、リハビリで治すとは?です。病気を治すというと、健康ではない病気の状態に対して、元の健康な状態に戻すことが治すにあたるかと思います。リハビリテーションで治すとなると、リハビリテーションが必要な状態を、元の健康な状態に戻すと考えれば良いでしょうか。

リハビリテーションが必要な状況、これは健康で安全な日常生活を送ることが損なわれている状況です。日常生活となりますと、ただ身体を動かすことだけではなく、また自分1人で行っていることもないわけで、社会の中で、必要な運動や活動、役割が全うすることで、社会の中での生活が成り立っているわけです。社会復帰させるということが、「リハビリテーションでの治す」ということであると思います。

先輩理学療法士の言葉での「リハビリで治す」というところは、社会生活を送る上で、元の役割が果たせるように戻すという真意が含まれていました。元の社会的な役割が全うできるように戻すとなると、これは単純に身体の動きが元通りに戻ることが、役割を全うすることには直結しません。

自分の身の回りの動きを日常生活活動といいますが、その中に体を動かすことや道具を扱うこと、また会話すること、さらには体を移動させることなどがあり、分解すると動作や運動というものが含まれています。

リハビリテーションで治す」これは、単純に動作や運動をできるようにすることではなく、日常生活を全うできるようにすることにつながりがないと、リハビリテーションといえないわけです。比喩表現で、運動をするだけであれば、理学療法士ではなく運動療法士であろう、という表現があります。身体の運動能力を回復させ、それが日常の生活の向上につながるのですが、時として生活を向上するために、代償の手段を使うこともリハビリテーションの中の1つです。 

リハビリで治す」ということの答えに、運動機能を元に戻すことだけに着眼するのではなく、動作活動を別の方法であれども、同じレベルでできるようにし、社会の中での役割を努めることができるようにする。ここに『治す』という言葉の意味と、リハビリテーションの意味を再認識する機会がありました。

伐採枝も水栽培の挿し木から、再び鉢植えに復帰できました。同じやり方や同じ形でなくとも、社会的役割が元どおりに果たせること。そのお手伝いをさせていただくのが、『リハビリ』。


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