嚥下動作・嚥下障害へのリハビリ介入
日常生活動作を考えるリハビリで、遭遇する「食べること」のお困りごと。食べ物を口に運び、飲み込む時に「むせる」また「飲み込みにくい」ことが嚥下障害です。
飲み込みに失敗すると、食べ物が気管に入り、「誤嚥」になります。誤嚥すると、咳き込んで外に出す働きはありますが、そのまま入ってしまうと、誤嚥性肺炎となり、入院治療という大きなことに発展してしまいます。
嚥下は、口に入れた食物が、口腔→咽頭→食道へと順に運ばれて行くことです。この過程の中で、咽頭の前方に喉頭があり、喉頭は肺につながる空気の通り道です。口腔から咽頭に食べ物が来た際に、喉頭が上に引き上がるので、喉頭の上にある組織が蓋になり、食道へ食べ物が落ちていきます。ちなみに、この蓋になる組織は、喉頭蓋(こうとうがい)といい、自在に動かせる組織ではありません。実は、喉頭や喉頭蓋を動かしているのは、顎の下や首の前にある筋肉なのです。
筋ということなら、縮んだり緩めたり運動できます。顎の下の喉仏に指をあてて、何かを飲み込んでみてください。喉頭が上にあがり、ゴクリとなります。これが嚥下で、意図的に動かすことのできる運動です。反射的な動きや自動的な動きはありますが、いずれにしろ、神経が働き、筋が収縮して、運動が起きています。
筋の運動、神経の働きとなると、動く際のタイミングや強さや組み合わせは重要で、運動練習すると効果が見られる身体の仕組みなのです。
というわけで、嚥下障害のある場合には、顎の下や頚の前面などの筋がスムーズに動けるようにするリハビリがあります。基本的には、顎や頚の筋を一旦緩めて、動きの準備をします。その後、飲み込みの反射や意図的な運動を呼び起こし、反復練習します。そして、実際の食事や間食などの食事動作の最中に、顎や頚を刺激したり固定させたりし、嚥下反射を促します。
実際の患者様でのお話しです。とある病院にて、高齢の女性の患者様への嚥下障害のアプローチでした。普段の食事場面では、次から次へと口に食物を入れられ、口一杯になり、滑り台の上から押し出されるように、喉の奥に落ちていく光景で、案の定、むせます。介護者は困り顔で後片付けに奔走していますが、患者様は苦しいうえに「迷惑をかけている」と申し訳なさそうなお顔になっておられました。リハビリで嚥下の練習をすると、たちまち飲み込みがスム ーズになり、食事場面が一変しました。一口一口で味わい、そして上手く飲み込み、笑顔の食事場面がお部屋に広がりました。その後もリハビリに伺うと「今日も口の練習!」と、話しにくい病状なのに懸命に言葉を発し、満面の笑みでリハビリを待っていただいている患者様の笑顔が、当時のリハビラーの原動力でした。



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