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リハビリをやめたらどうなる?運動でしか守れない運動能力

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このブログでリハビリについて、いろいろなことを紹介し、運動機能の向上に視点をあててきました。ここで、少し基本的なところに立ち返り、リハビリで取り扱う動作能力運動能力の維持について、ご紹介したいと思います。

日々、リハビリでの運動を行っていただくのですが、対象とする運動能力の向上と維持は、同じ運動で負荷量抵抗量運動頻度を、変えることで調整します。想像しやすいことかもしれませんが、運動機能に対してのアプローチは、強すぎると身体を傷めてしまいます。適度の強さであれば、向上し、心地よい疲労感が出ます。もう少し弱い場合は、向上はしませんが減らないように維持できます。そして、弱すぎたり運動しなかった場合は、弱っていき、廃用症候群とよばれる状態になります。

筋力持久力(筋肉の持久力)、呼吸循環器系栄養吸収代謝、これらに関しては、ほぼ同じく運動の強度の調整で、向上を目指したり、維持を目指したり、アプローチを調整できます。しかし、ほとんどの運動練習場面では、向上レベルなのか、維持レベルなのか、どのレベルなのかは見た目では判断がつきづらいところです。例えば、筋力増強運動の方法の一つでは、最大筋力80%以上は過度の筋損傷が起きてしまい、60~70%なら向上し、維持するには20~30%というように、示されています。実際のところは、回数や頻度を含めて、目標とする治療効果に合わせて、強度を設定します。

向上に関しては、比較的実感しやすく、例えば、動作ができるようになったり、スピードが上がったり、坂道や階段など重力に逆らう動きがしやすくなったり、といった変化を感じられます。しかし、維持の場合は分かりづらいことが多く、判断が難しい面があります。運動能力の維持では、頻度週1~2回が下限であり、それ以下であれば維持は難しいです。ここで、リハビリが生活のルーティンとなり、生活の中の一場面になった際に、リハビリをしているので運動能力が維持できている、という状況になります。人道的な観点から「リハビリをしなかったら運動能力が下がることを検証すること」は、絶対にできません。疾患の状態や他の症状で、偶発的にリハビリを一旦中止することはあり、そのケースでは身に染みて、痛いほど、リハビリでの運動能力の維持の効果を感じます。無力さや悔しさ、疾患への憎悪感に苦しむこともあります。

先日の大阪マラソン、多くのランナーが日ごろトレーニング成果の運動能力限界まで発揮し、寒空に咲く天満宮の梅の香りとともに、颯爽と駆け抜けていかれました。リハビラーも、ランナーの方に小さなお手伝いをさせていただき、沿道から観させていただいたのですが、後日談にて無力さ悔しさに打ちひしがれました下肢体幹をカバーした調整を大会前にさせていただいたのですが、大会後、なんと頚部肩甲帯に至るオーバーワーク兆候が出るという、マラソン競技の運動強度の高さと運動部位の幅広さを、痛感し自身の想定の浅さにうな垂れました。


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かなり長く経過した脳卒中のリハビリ介入

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 脳卒中で、発症から長く経過されている方のリハビリですが、これには、古くから格言のような言葉があります。「脳卒中患者の能力のプラトーは、対応しているセラピストの能力のプラトーである」という言葉です。これは、セラピストにとって厳しい言葉なのですが、対象となる患者様の機能回復の上限は、そのセラピストの治療能力の上限にかかっている、ということです。内面の話は、それだけ患者様の治療に一生懸命に向き合って、何とか回復する手段は無いのか常に研鑽しなさい、という意味もあります。

 脳は損傷すると完全に回復しない、ということが、現在の医学の定説ですが、損傷した部分以外をうまく使い機能を補うことは出来ます。その際に、筋や関節をいかにうまく使うのかをアプローチすることになります。裏を返すと、筋や関節といった、運動に直結する組織の状態に合わせた脳からの指令が、身体をうまく使い、動作がよりスムーズに行うことに、つながります。

 事例で、長い経過の脳卒中で、転倒により骨折をされ、リハビリを行うことがありました。骨折する前には、デイサービスに通ってはおられたのですが、骨折後の訪問リハビリで、骨折したことからの運動機能は回復しました。さらに、今の筋や関節の状態に合わせた脳の指令を出せるように、アプローチしたことで、脳卒中からの運動への影響が改善しています。

 「・・・セラピストの能力がプラトー・・・」の真意は、体の衰えや発達による運動機能の変化に、その時の状態での脳の働きを調整することが、新たなアプローチにつながる、ということなのかと。そして、これが「長い経過の脳卒中のリハビリアプローチ」ということかと、再考察できたように思います。

 季節や時間の様に、状況は変わっても、「その都度、できるリハビリはある」と思います。

 長く診療所の季節をお伝えしてきました桜の木、昨年夏になくなってしまいましたが、傍らの水仙は、今年も花を咲かせています大きく変わったもの、小さな変わらないもの、その年の状況に応じて、診療所の季節を伝えてくれています。


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床から立つ動作の難しさとリハビリ介入

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ご自宅での生活で発生しうる転倒」ですが、大きな怪我に至らなかった場合でも、立ち上がれないことのお困りが多いかと思います。特に、高齢で認知機能に影響がある場合、転倒による軽度のパニック状態も重なり、仰向けから起き上がれず大ごとになることがあります。そんな大ごとに際しても、リハビリでできることはあります。

転倒後の仰向け姿勢は、ある種「亀の子状態」です。起き上がろうと、力一杯に手足をバタバタさせても、起きることにつながりません。そして、介助者がいる状況でも、仰向けから引っ張り起こすには、かなりの力が必要です。多くの場合は、引っ張り合いになって、ご本人も介助者も双方の大きな負担と思われます。

この負担にリハビリでは、動作を組み替えて力を有効に活用する方法を工夫します。力一杯の手足の力を、押し上げることや支えることに利用します。その方法は、四つ這い姿勢高這い姿勢です。仰向けで倒れている状況から、横を向き側臥位に寝返り、そのまま床を見るように上半身を捻ります。寝返った方の肘をついて、身体を支えていきます。身体のねじりに続けて、膝で支えて殿部を持ち上げていきます。無事に、四つ這い姿勢になれました。

ここで、身体の運動機能に関与する仕組みがあります。地面が視野に入り、踏ん張れる支持面が見えると、動作に利用できます。特に認知機能の影響があると、視野にない空間での動きが不得意になり、「亀の子状態」の時がその現れだと思います。

四つ這いの姿勢からは、手すりやベッド柵など手で支えられるところがあれば、体幹を起こして膝立ち姿勢になり、片脚ずつ立てていくことで、立ち上がれます。もし、支えるところがなければ、手を床に着いたまま脚を片脚ずつ立てて膝を伸ばします。この姿勢が高這い姿勢で、股関節を伸ばして体幹を起こせば、立ち上がれます。


クリスマスローズという花です。珍しいことに、花はうつむきに咲きます。上ばかりに目線を向けず、地面を向いて強く踏ん張る姿が、床から立ち上がる動作と重なります。リハビリでは、動作の練習として、方法や順序を変えて、より楽な動作の方法を練習します。動作の反復練習は、対象となる方の身体を支え、繰り返し行いますが、実は、介助の量を徐々に減らしていき、助けのない状態で、独りで動作が安全に出来ることを目指します


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パーキンソンの運動障害へのリハビリ介入

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 パーキンソンなどの運動障害では、神経や筋の仕組みが崩れ、身体がこわばって動きづらくなることがあります。経過が長くなると関節が固くなったり立ち座りや歩くことが難しくなってきます。リハビリでは、ここで遭遇する「身体がこわばってうごきづらい」というお困りごとをサポートします。神経や筋の仕組みに対して、関節への運動の刺激で、本来の身体の動きを再び呼び起こしていきます。

 疾病により、大脳からの意図的な運動指令が伝わりにくくなります。その時に、固縮や寡動また無動という動きづらい現象が現れます。この状態で、特に特徴的なこととして、動かそうと意識するとかえってうごかしづらくなります。

 運動指令は、一つの系統だけではありません。いくつかの系統があり、複雑に関係しながら運動はコントロールされています。リハビリでは、問題のある経路を無理に改善しようとするだけでなく、別の系統の働きにアプローチして補うことがあります。残存している別の経路の機能を高め、全体として動作能力を補おうという考え方です。

 神経学の研究成果により、ヒトには生得的に備わっている「手を伸ばす」「身体を支える」「脚を運ぶ」という動くための機能があるといわれています。この機能は、成長とともに高次の運動制御に統合され、徐々に使われなくなります。この使われていない「生得的な動くための機能」を、身体の動きの運動指令の前面に引き出すことにつながるのです。

 具体的なアプローチには、順序に沿った運動があります。①まず、基盤の「動きの感覚」を関節運動感覚として、刺激を入力します。対象となる方の関節を、アプローチするセラピストが動かし、関節の動く感覚を感じ取っていただきます。②続いて、その運動刺激に対し、使われていない系統からの反応として、筋の活動が出現してきます。個々の筋の活動をつなげて、「身体を支える」また「脚を運ぶ」運動を引き出します。この運動は、強い力や重い負荷ではなく、ごく微量な強さの力ですので、第3者の見た目には、ふわふわと手足を動かしているくらいにしか見えません。③この次の段階で、実際の動作の一部分から、運動動作の練習をします。歩く時の足の出し方や支え方の練習です。④そして、さらに進むと、実際の歩く練習に移っていきます。

 リハビリというと、汗をかくようなトレーニングや、息があがるような運動を想像されるかと思われます。しかし、弱ったものを強くする運動だけでなく、残存している機能呼び起こすことも、リハビリです。

眠っていたものを呼び起こすときには、優しく、そっと、語り掛けるように

強く押し出すのではなく、身体が思い出すのを待ちながら

これもまた、パーキンソンの運動障害への大切なアプローチの一つです。


眠っていたスイセン。優しく見守り、そっと待てば、思い出したかのように蕾を出します。


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嚥下動作・嚥下障害へのリハビリ介入

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 日常生活動作を考えるリハビリで、遭遇する「食べること」のお困りごと。食べ物を口に運び、飲み込む時に「むせる」また「飲み込みにくい」ことが嚥下障害です。

 飲み込みに失敗すると、食べ物が気管に入り、「誤嚥」になります。誤嚥すると、咳き込んで外に出す働きはありますが、そのまま入ってしまうと、誤嚥性肺炎となり、入院治療という大きなことに発展してしまいます。

 嚥下は、口に入れた食物が、口腔→咽頭→食道へと順に運ばれて行くことです。この過程の中で、咽頭の前方に喉頭があり、喉頭は肺につながる空気の通り道です。口腔から咽頭に食べ物が来た際に、喉頭が上に引き上がるので、喉頭の上にある組織が蓋になり、食道へ食べ物が落ちていきます。ちなみに、この蓋になる組織は、喉頭蓋(こうとうがい)といい、自在に動かせる組織ではありません。実は、喉頭や喉頭蓋を動かしているのは、顎の下や首の前にある筋肉なのです。

 筋ということなら、縮んだり緩めたり運動できます。顎の下の喉仏に指をあてて、何かを飲み込んでみてください。喉頭が上にあがり、ゴクリとなります。これが嚥下で、意図的に動かすことのできる運動です。反射的な動きや自動的な動きはありますが、いずれにしろ、神経が働き、筋が収縮して、運動が起きています。

 筋の運動神経の働きとなると、動く際のタイミングや強さや組み合わせは重要で、運動練習すると効果が見られる身体の仕組みなのです。

 というわけで、嚥下障害のある場合には、顎の下や頚の前面などの筋がスムーズに動けるようにするリハビリがあります。基本的には、顎や頚の筋を一旦緩めて、動きの準備をします。その後、飲み込みの反射や意図的な運動を呼び起こし、反復練習します。そして、実際の食事や間食などの食事動作の最中に、顎や頚を刺激したり固定させたりし、嚥下反射を促します。

実際の患者様でのお話しです。とある病院にて、高齢の女性の患者様への嚥下障害のアプローチでした。普段の食事場面では、次から次へと口に食物を入れられ、口一杯になり、滑り台の上から押し出されるように、喉の奥に落ちていく光景で、案の定、むせます。介護者は困り顔で後片付けに奔走していますが、患者様は苦しいうえに「迷惑をかけている」と申し訳なさそうなお顔になっておられました。リハビリで嚥下の練習をすると、たちまち飲み込みがスム ーズになり、食事場面が一変しました。一口一口で味わい、そして上手く飲み込み、笑顔の食事場面がお部屋に広がりました。その後もリハビリに伺うと「今日も口の練習!」と、話しにくい病状なのに懸命に言葉を発し、満面の笑みでリハビリを待っていただいている患者様の笑顔が、当時のリハビラーの原動力でした。


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シリーズ 動作と運動 ~歩行~

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リハビリで、日常生活動作を考えるシリーズの続きです。日常生活動作や基本的動作能力と運動機能、この2つの組み合わせで、生活を考えます。歩くという動作は、日常生活の中で最も基本的な移動動作です。この「最も基本的な動作」を分解し、身体の動き運動機能の関係から生活を考えていきます。また、歩行は、起居移動動作の役割だけでなく、脳の活動や全身的な体調も向上する役割もあります。



1.日常生活活動の移動動作の代表
 歩行は、日常生活動作起居移動動作の1つです。その中でも、特に移動動作は身体を移動させることであり、代表的な基本的動作です。また、段差昇降や階段昇降、不整地歩行といった応用動作につながります。何より、ヒトだけが行える二足歩行が、手を空けて道具を使用できたり、仲間のところへ移動してコミュニケーションをとったり、社会的な発達にもつながる高度な動作です。


2.基本的動作の歩行動作を分解
 基本的動作としての歩行ですが、動作の研究によるとズバ抜けて特殊なメカニズムがあります。上半身と下半身に分けて、上半身を下半身の力で運ぶという仕組みがベースになります。また、バランスを崩すことで前に進む推進力を生み出し、倒れないように体重を支えることで、成り立っています。そのための関節運動が、連続した動きで歩くことができています。連続した運動ですが、動作を区切る始まりは、踵が地面に着く「踵接地」です。続いて、足底を接地し体重を支える準備をします。そして、しっかりと体重を支え、続いて、反対の脚に体重を移動させます。反対の脚で支えている間に、爪先で床を蹴り脚を振り出します。


3.歩行動作に必要な関節の動きや運動機能
 この一連の運動では、股関節はさほど可動域は必要としません。膝関節も60度ほど曲がれば支障ありませんが、足関節は背屈方向底屈方向ともに、最大の可動範囲が必要です。筋力については、見た目の大胆さはないものの、片脚で体を推し進めるという強力な力が必要です。一例としては、1つの筋肉で体重の3~4倍の力が必要といわれます。歩行については、特別に、生得的な神経系の仕組みがあり、中枢神経レベルでの「歩行パターンジェネレータ」と呼ばれている機構です。この機構もうまく活用して、安定した歩行ができています。


4.運動機能へ、そして動作能力へ、それぞれにアプローチ」
 では、例のごとく、まずは運動機能へのアプローチを考えます。関節運動ができるための基盤の関節可動域にアプローチします。歩行では、股関節の伸展、膝関節の伸展、足関節の背屈・底屈、これらの関節可動域がポイントです。続いて、力を発揮できるよう、筋力を賦活したり増強したりします。歩行で必要な筋力は、体重の支持慣性力の制御のため、関節運動の無い等尺性収縮や負荷の強い伸張性収縮が、必要になります。股関節外転の等尺性収縮、大腿四頭筋の伸張性収縮、体重支持と推進の股関節伸展筋などは、運動様式を合致した方法でトレーニングします。大半の筋活動は、よく見る短縮性収縮筋力増強運動を行います。そして、歩行の動作練習に近い運動を行なっていきます。歩行のパターンジェネレータを活性化して、多関節での運動を行い筋出力を発揮させます。他にもたくさんアプローチはあります。

 動作能力の練習は、実際の動作を分割したり、介助量を増やしたりして、徐々に実動作に近づけます。立位での体重の左右移動に始まり、片脚を前に出すステップ、その脚に体重を移動させること、そして脚を振り出すこと、これらを部分練習し、徐々に連続させていきます。状態によっては、歩行器や杖などの物品、またセラピストの手による介助で、筋活動や関節運動をサポートし、目標とする動作を上手くできることを繰り返します。日々の繰り返し練習で、徐々にサポートを減らしていき、独りでできる状態を目指します。歩行器や杖も使わず、介添えや支えなく、独りで歩く「独歩」です。なぜか、歩行動作以外では「独坐」や「独立ち」とは表現しないのです。

 歩くことは、移動動作の練習ではありますが、日常生活動作以外の側面で、脳科学や老年医学など、さまざまな意味を持ちます。何より、患者様や利用者様にとっては「自分で歩ける」ということは、歩行以外の基本的動作よりも特別な意味を持ち、別次元の動作です。そのため、「歩く練習」という言葉が、単なる動作練習以上に意味を持つことがあります。


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シリーズ 動作と運動 ~起き上がり~

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 リハビリで、日常生活動作を考えるシリーズです。日常生活動作や基本的動作能力の基盤となる運動機能、この2つを組み合わせて、生活をしやすくすることを考えます。今回は、寝ている姿勢から身体を起こす際の、起き上がりという動作について、体幹、股・膝・足関節、肩・肘・手関節の関節運動筋力などの運動機能を考えます。



1.日常生活活動の起居動作を分解
 日常生活で必要な日常生活動作の一つの起居移動動作です。起居移動動作は、身体の姿勢を変えたり、身体を移動させることで、基本的動作応用動作に分かれます。他の日常生活動作の項目とは違い、多くの基本的動作そのものが含まれます。寝ている姿勢から身体を起こすことが、起き上がりですが、床や布団からの場合とベッドやソファーの場合という環境条件により、起き上がった後の脚の形が違い、それに伴い関節運動も変わります。


2.基本的動作の起き上がり動作を分解
基本的動作としての起き上がりですが、環境条件により運動する関節が異なります。始まりの姿勢は、仰向けに寝ている姿勢の背臥位です。次の動き出しですが、年齢や活動性により変わります。若年層では、脚を上げて反動で起き上がりますが、多くの場合は、頭を上げることから始まります。顎を引いて頭を上げた後、上半身を捻り、体幹を回旋させながら屈曲します 。この時に右か左のどちらかの肘を支えにして体を起こします。その後は2つのパターンにわかれます。床や布団の場合は、そのまま体を起こし、脚を投げ出した姿勢の長座位で座ります 。ベッド等の場合は体を起こした後、膝から下をベッドやソファーの下に下ろし、椅子に座ったような姿勢端座位なります。


3.起き上がり動作に必要な関節の動き
 では、関節はどのような動きが必要でしょうか。頭を上げる際の頸部の屈曲、体をひねる際の体幹の回旋、また体幹の屈曲、さらに肘で支えるための肩関節の伸展肘関節の伸展も必要になります。動きとしては見えないですが、体を起こしてきた際に足の重さを有効に使うため、股関節が屈曲し膝関節が伸展する、という力も必要になります。床や布団では、足の重みを使うことができないため、体幹の屈曲や上肢での支持がさらに必要になります。


4.運動機能へ、そして動作能力へ、それぞれにアプローチ
 まず、運動機能を分解して、運動機能へのアプローチを考えます。頚部の屈曲の可動域と筋力を・・・と、はじめるところですが、体幹の回旋をどのタイミングで行うかにより、必要性は変わります。背臥位姿勢から、寝返って側座位となると、頚部や体幹の屈曲は必要ありません。実は、背臥位→半側臥位→側臥位となるにつれ、上肢での支持が必要になります。反対に頚部や体幹の屈曲は、必要なくなります。結果として、どの動作方法を選択するかで、必要となる運動機能が変わります。また、動きとしては目に見えないですが、体を起こしてきた際に、足の重さを有効に使うため、股関節を屈曲し膝関節を伸展させます。これらのことを考えていくと、運動機能の「協調性」のアプローチが適応なります。運動での協調性は、筋肉の力の出し具合や、力を入れるタイミングや、複数の筋肉のコントロールです。運動機能ではありますが、実際のリハビリ場面をみた印象は、動作練習に近いです。実際の動作の動きの一部を反復練習し、運動学習効果により、ふらつきや震え、動作の失敗を減らします。単なる運動範囲拡大や筋力向上ではなく、運動をコントロールしてうまく出来るように、アプローチします。最終結果は、動作の中でうまく使え、失敗なく日常生活動作ができること、これはリハビリの基本として変わりません。
 暖かい色の菜の花、集まってきれいに咲いていますが、いくつもの花房があり、花房も小さな花弁が集まっています。リハビリも同じく、運動が集まり、動作となり、動作が集まり生活になります。
 歩く動作の練習と同様に、起き上がる動作練習だけ、また、身体の運動練習だけでは、日常生活動作につながりません。もう一つ忘れてはいけないものが、起き上がった後座位姿勢を保持しておく能力、ここにつながっていなければ、日常生活の場面で使う事はできません。起き上がりができても座っていられない、などとなると、本末転倒で、アプローチする側のエゴにしか過ぎません。


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シリーズ 動作と運動 ~立ち坐り~

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 リハビリの中での、日常生活への復帰と、そのための運動をシリーズで考えます。日常生活を送るための動作能力、動作の基盤となる身体運動機能、この2つを組み合わせて、対象となる方の生活をしやすくすることを考えます今回は、座っている姿勢から起立する「立ち上がり、座り込み動作と、その時に必要になる関節の運動や筋力などの運動機能、を考えます。



1.日常生活活動の中の立ち上がり
 日常生活動作の排泄動作入浴動作、また、起居移動動作の中の基本的動作を考えます。排泄動作の場面を分解すると、トイレに入る、便座まで移動する、立った姿勢で方向を変える、衣服を下ろす、便座へ座る、用をたす、後始末をする、便座から立ち上がる、衣服を上げる、手を洗う、トイレの外へ移動する、というふうに、分けることができます。入浴動作も同じように分けることができます。
 分けていく中で、立つ動きや座る動きがあり、これらを特に、起居移動動作といいます。起居移動動作は、身体の向きや位置を変える動作の総称で、さらに分解すると、基本的動作応用動作に分かれます。
 ここで排泄動作や入浴動作の中の、立ち上がるや座り込むについて、立ち上がりという、基本的動作能力にたどり着きます。立ち上がりは、起立動作とも言われ、座っている姿勢から、立ち上がって、立った姿勢になることを指し、座り込む動作とセットで、立ち坐りとも呼ばれます。


2.基本的動作の立ち上がりを分解
 基本的動作である立ち上がりは、体全体の動きを指し示します。動作は、関節の動きが組み合わさったものなのです。立ち上がりの動きで組み合わさる関節は、主なものとして、足の付け根の股関節膝関節足首の足関節があります。そして、それぞれの関節に動きの方向運動方向)があり、曲げ伸ばし屈曲伸展)、開く閉じる外転内転)、捻じる外旋内旋)といった動きが基本になります。関節によって、運動方向は異なり、立ち坐りでは、股関節の屈曲と伸展、膝関節の屈曲と伸展、足関節の背屈と底屈、の動きが必要です。このように、立ち坐りを分解すると、脚の関節運動になり、実際には、股関節、膝関節、足関節などの動きが組み合わさり、タイミング良く動いて、立ち坐りができているのです。


3.要素となる関節運動を仕分け
 関節が動くためには、いつかの仕組みがあり、動かすことができているのです。立ち坐りでの股関節は、はじめの身体を前に倒す時や、後半の身体をまっすぐに立てる時に、曲げたり伸ばしたりします。身体を前に倒す時には、股関節が曲がる可動性が必要で、屈曲可動域といいます。この際に、深く曲げる可動範囲と、なめらかに曲がることが重要です。次に、関節を動かす力である筋肉は、股関節を伸ばす時に強力な力が必要で、股関節の伸展筋の代表は、大殿筋です。この筋が、骨盤大腿骨を繋いでいて、筋肉に力が入って収縮すると、股関節が伸びて、身体を起こします。実は、身体を前に倒す時には、急に倒れすぎないように股関節の伸展筋で、ブレーキをかけています。この時にも、筋力は必要になります。


4.「運動」機能へ、そして「動作」能力へ、それぞれにアプローチ
 分解し、関節運動の可動性や筋力などの要素に分け、それぞれをトレーニングすることで、運動機能の向上をはかります。立ち坐りでは、股関節の可動範囲は屈曲方向に120度ほど必要です。それを目指して、関節可動域を広げるために、関節可動域運動伸長運動を行います。伸張運動は、よく耳にするストレッチですが、実際は奥深く、伸ばしたい組織が関節なのか筋肉なのか、また、複数あるどの筋肉なのか、さらには筋肉の中の部位のどこなのかなど、標的とする組織や部位によって、伸ばす方法は変わります。関節運動の力源のために、筋力のトレーニングとしては、筋肉増強運動を行います。立ち坐りの中の股関節は、伸展方向へ、体重の3分の1程度(片足につき)の強さで、縮む方向への短縮性収縮運動が必要です。筋力トレーニングは、それに合わせて選びます。実際の場面で、キッキングというtann運動で行いますが、見た目じ運動でも、手法により強化する筋を変えています。単純に強くするためのトレーニングでは 、最終目標の動作能力の中で必要とされる力にはなりません。
 リハビリでは、トレーニングやケアのことをアプローチと表現します。この言葉は、病気やケガの治療ではなく、障害の状態を克服するという概念で、多様な手法でサポートするので、アプローチなのです。運動機能が向上するアプローチに並行して、動作能力獲得するアプローチで、動作練習を行います。そして、運動機能のアプローチは、動作の中でその運動機能を発揮できるために、立ち坐りの時に使う状況と同じように、股関節屈曲90度から0度までの範囲で 、体重の3分の1程の力を目指して、筋力増強運動をすることになります。これは、本当にごく一部で、一つの動作に必要となるたくさんの関節運動にそれぞれアプローチし、向上した運動機能を組み合わせる動作練習につなげていくのです。


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動作するための各関節の運動

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 リハビリの中では、日常生活への復帰を考えます。日常生活を送るための動作能力、動作の基盤となる身体運動機能、この2つを組み合わせて、対象となる方の生活をしやすくすることを考えます。例えば、椅子に座っていて立ち上がる際には、起立という動作と、股関節・膝関節・足関節の関節運動筋力などの運動機能、この両方を考えます。



1.日常生活活動の分解
 日常生活で必要な動作が日常生活動作ですが、食事動作更衣動作などの複数項目があり、その一つに起居移動動作というものがあります。日常生活動作は、基本的動作や応用動作に分かれます。起居移動動作を分解すると、起き上がり立ち上がりなどに分けることができ、ここに「起立」動作が含まれます。起立は、座っている姿勢から立ち上がることで、唯一ヒトに与えられた「歩行」にも発展する動作です。


2.基本的動作を分解すると関節の動きに
 基本的動作や応用動作などは、立ち上がり歩行、また段差昇降走行であり、体全体の動きを指し示します。これらの動作は、実は全身に存在している関節の動きが、組み合わさったものです。座っている状態から、足の付け根股関節を曲げて、身体を前に倒してください。次に足に体重が載るまで倒し、股関節と膝関節を伸ばしてください。倒れないように、バランスをとりながら、股関節・膝関節・足関節を伸ばせば!、立ち上がりましたね。このように、「動作」を分解すると、身体の各関節の運動になり、実際には、いくつもの関節の動きが組み合わさり、タイミング良く動いて、「動作」ができているのです。


3.関節を動かせることの仕組み
 では、関節はどのような仕組みで動かすことができているのでしょうか。まず、関節というものは、骨と骨のつなぎ目であり、非常になめらかでスムーズに折れ曲がるようになっています。変形性関節症で、このスムーズさがなくなると、動かすときに痛みが生じたり、動きが制限されたりします。次に、関節を動かしている力の源である筋肉です。医学の用語では、「」というふうに表現されますが、トレーニングなどでもよく耳にする、上腕二頭筋、大胸筋、腹筋、背筋、大腿四頭筋、ヒラメ筋などが、筋肉の代表です。これらの筋が、関節をまたいで骨につながっているため、筋肉に力が入って収縮すると、関節の動きが現れます。また、筋肉の収縮をなめらかにコントロールしないと、目的の運動になりません。そのためのタイミングや他の筋肉との調整が、運動の協調性といわれ、これには脳や脊髄の神経、体が感じ取っている様々な感覚の働きにより、程よい加減に調整されているのです。お正月のおせちの黒豆を、お箸で潰さずに摘み口に運びましたよね。


4.「運動」機能へ、そして「動作」能力へ、それぞれにアプローチ
 分解し、要素に分けた結果の「運動」ですが、それぞれをトレーニングすることで、運動機能の向上がねらえます。関節の動きを広げる関節可動域運動、筋の働きを強くする筋力増強運動、そして、運動がスムーズに行われるための協調性運動、これにより、各関節で動作に必要な動きがスムーズにできるよう「アプローチ」します。しかし、体全体の動きである動作につなげるには、各関節の運動を全身的にうまく調整する必要があります。そのために、動作能力の練習を行いますが、動作能力の練習は、実際の日常生活の場面を想定して「アプローチ」することが多いのです。ここで、訪問リハビリという場面であれば、リアルに日常生活を行っている場面で動作能力の練習ができるわけです。まさに、日常生活の動作の練習となるわけであり、病院や施設の中でのリハビリと一線を画している訪問リハビリの重要なポイントなのです。

 冬の彩りで、庭や公園を赤く賑わせる山茶花(サザンカ)です。樹々の彩りをよく観ると、一つ一つの花。その花を、さらに観ると、たくさんの花弁。組み合わさり、枝々に広がり、それぞれが調和し、赤と緑の彩りとなっています。
 歩く動作練習だけ、また、身体の運動練習だけ、それぞれ単独では日常生活動作能力の獲得につながりません運動機能へのアプローチ、動作能力へのアプローチ、どちらも行わなければ、リハビリにはならないのです。


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関節を動かさない筋力トレーニング

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 リハビリの中には、日常生活で必要な動作や運動の練習というものがあります。その際には、医学や運動治療学といった、科学的な理論をもとにして、リハビリのメニューを計画し、プログラムとして実施します。今回はその中から、筋力トレーニングの一側面を紹介します。

1.筋力が弱っている時の“動かない症状” 
 筋力が弱っている、という状態では、重いものを動かせなくなったようなイメージがあるかと思います。お米10キロが持ち上げられなくなるというようなことだけが、筋力低下なのでしょうか。実は、さまざまなレベルがあり、言葉は、筋力低下のひと言で表されてしまいます。弱るレベルが進行すると、自分の身体の重さすら動かせないほど、力が弱くなります。


2.筋力低下に対してのトレーニング
 弱った筋力を回復させるには、負荷をかけ運動しなければなりません。イメージされやすいのは、ダンベルやマシンを使って、歯を食いしばって、関節を動かしている場面です。筋力が極度に弱り、自分の身体の重さすら動かせないほどの場合には、到底想像できません。実は、筋力の強化必要な
負荷は、その時の最大筋力に応じた割合で決まり、一例では最大筋力の3分の2という指標があります。つまりは、筋力の強い場合ではダンベルやマシンなどで大きな負荷をかけますが、弱い場合には重りや機械の負荷なく、自分の身体の重さが負荷になったりします。さらに弱い場合は、介助されて運動することがほどよい負荷になる場合もあるのです。


3.関節を動かさなくてもトレーニング運動になる
 筋力トレーニングをしている場面では、肘や膝など関節を動かして、運動しているイメージがあるかと思います。しかし、生理学や運動治療学の理論を用いると、関節を動かすことではなく筋肉を収縮させて力を入れることが、トレーニングの要なのです。専門的には、等尺性収縮運動という方法で、関節の動きは見えませんが、筋肉はしっかりと収縮する運動なのです。腹筋のプランク、足上げ(腹筋)、空気椅子、果てには、買い物袋を吊り下げている時、実はこれら全て等尺性収縮運動なのです。運動には見えなくても、きちんと筋肉が収縮し、トレーニングになります。


4.日常生活動作を分解すると各関節の運動、その1つの要素が筋力 
 日常生活動作の要素として、筋力や関節運動は必要な要素です。それぞれの関節を自分の力で動かせることが、動作能力の向上の第一歩かと思います。理論に基づいて、要素を考えて筋力トレーニングに行き当たっても、プロスポーツやトレーニングジムのような激しい運動ばかりを想像する必要はありません。筋力トレーニングする方法はたくさんあり、それぞれの状態にあった方法があり、時として、激しくない運動もあるわけです。
  一見すると、曼珠沙華(ヒガンバナ)ですが、注意深く観ると、根元に葉があり、花と葉が同時にみられます。ここが見分けポイントで、ダイヤモンドリリーという名前の花なのです。一見、運動に見えなくても、要素を抑えれば立派な運動トレーニングということもあります。
 想像豊かにしていただくと、新たなリハビリの視点にお気づきになるでしょうか。関節を曲げ伸ばしして動かしたら痛い時や、体重をかけたら痛い時にも、関節を動かさなくても筋力トレーニングできる、素晴らしい方法なのです。


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